エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
「調子はどう? まぁ、何か変わったことがあれば、真っ先に須皇先生に伝えるんだろうけれど。一応カルテに残しておきたいから、もう一度報告して」

「ここ二、三週間は、調子がいいです。動悸もなくなりました」

「以前より疲れやすくなったとか、軽い運動でも息があがるとか、ない?」

「もともと体力はないんですが……急に変わった感じはしません」

失笑しながら答えると、沢渡先生は私の手首を持ち上げて、まじまじと観察した。

「見るからに体力なさそうだな。細いし白いし。でも、前回見た時よりは若干顔色がよくなっているかな」

沢渡先生は私に向き直って、聴診器を胸に当てる。

診察に関しては誠実なようで、眼鏡の奥の瞳を険しくして事に当たっている。

血圧などひと通り確認し、その結果を電子カルテに打ち込んだ。

「そういえば、姉に会ったって?」

ふと、思い出したように沢渡先生が切り出した。

私は病棟でお世話になった美沙さんのことを思い出し「あっ」と声をあげる。

「はい! お世話になりました! とても優しい方で」

「優しい、ね」

なぜだか彼は皮肉めいた笑みを浮かべている。

意味深なその表情はなんだろう? 首を傾げていると。
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