エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
同居を始めて一カ月半。いまだ実家には一度も戻っていない。

当初は、透佳くんが当直のタイミングで帰る計画だったけれど、いざ同居を始めてみると、この家は出勤に便利すぎた。

平日なら、この家から往復するほうが断然楽だし、夜遅い時間に実家へ帰ったところで、両親とたいしたコミュニケーションもとれない。

だったら土日にあらためて帰ろうという結論に至った。

とはいうものの、そもそも最初の数週間は、土日がないほど仕事が忙しかったし、そのあとの数週間は、体調を戻すことで精一杯だった。

結局一度も帰省できぬまま今に至る。

メールのやりとりはあったものの、そろそろ電話の一本でも入れようかと思っていた矢先。母のほうから電話をかけてきてくれた。

『彩葉ったら、たまに帰るなんて言っといて、全然帰ってこないんだもの。よっぽど透佳くんのそばが居心地よかったのね』

冷やかすように言われて、あはは、とから笑いを浮かべる。

居心地というか、通勤が……と言いかけて、そのままにしておいたほうが両親は心配しないだろうと思い直し黙っておいた。
< 220 / 259 >

この作品をシェア

pagetop