エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
「身重の女性に手を上げるなんて、父親であっても許されません。危害を加えるなら、警察沙汰にしますよ」

透佳くんは、聞いたこともないほど冷え冷えとした声で教授を威圧する。

警察沙汰という言葉に恐怖を感じたのだろう、教授は渋々、美沙さんから距離をとった。

美沙さんはまだ、私の腕の中でガクガクと震えている。

かわいそうに。ずっと父親に怯えて生きてきたのだろうか。

透佳くんは、美沙さんに背を向けたまま静かに切り出した。

「美沙。君の恋人というのは、山下先生のことだろう」

美沙さんが、ガバッと顔を跳ね上げる。

「知っていたんですか……!?」

「あの日、君とホテルに残ったのは、山下先生だったじゃないか」

ちらりとこちらに視線を流して、緩く微笑む。

美沙さんは小さく息をつき、お腹に視線を落とした。

「でも、私、妊娠のこと、山下先生にも言ってなくて」

「彼なら、結婚したい人がいるからと、必死にプロポーズの練習をしていたよ。当直中にさんざん付き合わされて、うんざりした」

美沙さんが再び顔を跳ね上げる。

その表情は、お父さまに怯えて絶望していたときとは打って変わって、希望に満ち溢れていた。
< 233 / 259 >

この作品をシェア

pagetop