エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
「それって……!」

透佳くんがこくりと頷く。

どうやらお相手の山下先生は、美沙さんにプロポーズするつもりだったようだ。

子どもができたと打ち明けたら、きっと喜んでくれるに違いない。

「美沙。自立するんだ。結婚したい人がいるなら、すればいい。これ以上、親のいいなりになんかなるな」

彼女の表情が輝く。こぼれ落ちる涙に、もう悲壮感なんてない。喜びが、愛情が、溢れ出ていくようで。

「須皇先生……ありがとうございます……」

手の甲で濡れた目元を拭う。その表情は、初めて出会ったときを思い起こさせた。

はつらつとした、明るい性格の女性。それが本来の美沙さんなのだと思う。

「……早風さん……巻き込んでしまって、本当にごめんなさい……」

私の手を握って、深く頭を下げる。私は大きくかぶりを振って答えた。

「私は大丈夫ですから。頭を上げてください」

「……私、ちゃんと会って報告してきます……山下先生に……」

私の手を強く握ったあと、入口に向かってパタパタと駆けだした。

妊婦さんなのに走っちゃ危ない、そう言おうとしたところで。

「待てよ姉貴、走るなって! 俺が送っていくから!」

沢渡先生が血相を変えて、あとを追いかけていく。

「沢渡!」

その後ろ姿に向かって、透佳くんが声をかけた。沢渡先生は眉をひそめて振り返る。
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