みずあめびより
去年鈴太郎が告白した時に座ったのと同じベンチに座る。

「寒くないか?」

「うん。」

「真中がでかい声で声かけて来たせいで、ルーレット勢いよく回せなかったから、結局それ1つしか当たらなかったな。」

衣緒が手に持っているあんず飴に目を向ける。

「半分こにすればいいよ。よく練って食べよう。」

衣緒は楽しそうに水飴を練り始める。

「さっきね、あんず飴のお店の前で色とりどりの飴が並んでて、キラキラしてて・・・それ見て思った。私達の思い出もそんな感じだなって。ひとつひとつ、ささやかで派手じゃないけど、大切な思い出。」

「・・・そうだな。」

「私達の気持ちも・・・最初より随分まろやかになったよね。よく練った水飴みたいに。」

「本当最初の頃に比べて二人共素直になったっていうか、よりそのままの自分を出すようにしたら、それが相手にとっても良いことだったっていうか・・・。」

「うん・・・益々美味しくなったって感じだね。」

幸せいっぱいに微笑む二人の瞳には一番大切な人が映って、水飴のようにキラキラと(きら)めいていた。
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