みずあめびより
衣緒が水飴を練る手を止める。

「白くなったよ。そろそろいいかもね。」

「俺、いらないから食べろよ。」

「え?練ったし美味しいよ?」

「色々食べたしお腹いっぱい。」

「そっか・・・残念だけど・・・じゃあいただきまーす。」

水飴をたっぷりすくって口に入れた瞬間、後頭部に手が触れたのを感じたと思うと勢いよく引き寄せられ口づけられる。

「!!!!!」

「本当だ、美味い。」

「そ、外だよ!?会社も近いし、 真中さん達だってまだいるかもしれないのに・・・。」

慌てて周りを見渡す。

「気が変わったんだよ・・・3秒以内だからセーフだろ。」

「・・・もう。」

街灯に照らされた横顔が赤くなっている。

「・・・指輪やっぱり浴衣に合うな。」

衣緒の左手薬指には、食品サンプルのような、あんず飴そっくりの指輪があった。

「指輪の入れ物もモナカそっくりでかわいくて・・・すごく気に入ってる。大事にするね・・・もちろん、リンくんの事も、ずっと。」

鈴太郎をじっと見つめて言うと、彼は目を逸らして怒ったように言う。

「それはこっちのセリフだし・・・というか浴衣着てそんな顔してそんなこと言われたら3秒じゃ済まなくなるからな。」

「え・・・。」

───リンくん、冗談言えないから、本当に・・・。

無言で浴びせられる彼の熱い視線に焦り、急いで残りのあんず飴とモナカを胃におさめる。

「た、食べたから帰ろ!?あ~、モナカに口の中の水分持ってかれた~途中自販で飲み物買お~。」

衣緒は大げさに言うと鈴太郎に背を向けて立ち上がった。
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