最後の夜
いくらか泣いて、創祐の部屋の洗面台で化粧を落として素顔に戻った。

あんなに泣いて、お酒まで飲んでいたのに顔はむくんでいなかった。

どこか胸のつっかえが取れて、すっきりした顔をしている鏡の中の自分に、笑いかけてみる。

素直に笑えたような気がした。

居間に戻り、創祐の横に腰掛けて化粧を始める。

私は化粧をしている時間が大好き。

自分が女であることを再認識できるようで。

水商売をしていても、相手は酔っ払った年配の男の人が殆どで、逆に錆びてしまいそうな気分になる事がある。

「良かった…肌荒れ起こしてない」

小さな声で呟く。
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