最後の夜
「…ぶか…じょうぶ…で…か…」

聞き慣れない声と微かなぬくもりに、うっすらと目をあけた。

誰かいる。

男?女?

「大丈夫ですか!?何かあったんですか!?」

男だ。

「だれ…」

私のかすれた声を確認してから、目の前の男は自分の着ていたダウンを私に着せてくれた。

「今、救急車呼びますから!」

携帯を取り出した手を掴んで止めた。

「よばないで。はずかしくて病院なんかいけない!」

突然涙が溢れてきた。

「おねがい…」

泣いて懇願する私を見て、申し訳なさそうな顔をして携帯をしまった。

「じゃあ、僕の家に来てください。傷の手当てと、体を温めに…大丈夫、僕は何もしないです。僕の友人たちも」

彼はそう言って、微笑んだ。
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