最後の夜
「愛…です。」

小さい声で呟いた。

「愛ちゃん。すっごい綺麗ですね。背中の入れ墨」

その一言に我に返ったあたしは、聡志の手を振り払った。

「警戒しないでください。僕もそう変わらない。」

はにかんだ笑顔を見せて、聡志はぱっと右腕の袖をめくって見せる。

無数の根性焼きと、切り傷。

「ね?変わらないでしょ。愛ちゃんは入れ墨、僕は喧嘩した数の根性焼き」
「同類だって、言いたいの?」

破れた上着のポケットから、くしゃくしゃになった煙草を取り出した。
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