それつけたの、俺だよ?-六花の恋ー【完】【番外編2完】
「わかんない……将棋の話とかしたことないから……」
部屋のすみに正座したわたしとお姉ちゃん。
こそっとささやいてきたお姉ちゃんに、わたしも不安な言葉を返すしかなかった。
お父さん、将棋割と強いんだよ……ルールすら知らなかったらどうにもならないものだし……。
お姉ちゃんも不安な表情だ。
お母さんは「人が来たらお母さんが対応するから、ここは静かにしておくね」と言って、和室にはいない。
お母さんなりの配慮だろうか。
――しかし、結果はあっさりついてしまった。
三十分後。
「…………………ありません」
「ありがとうございました」
勝ったのは玲哉くんだった。
お父さんはうつむいて膝の上でこぶしを握り締めている。
終わってからよくよく盤をのぞいたけど、ルールを知っている程度のわたしから見ても、お父さんが大敗したのがわかった。
「いや――完敗。すごいな。誰かに習ったのか?」
顔をあげたお父さんは、いっそ清々しい表情になっていた。
「将棋や囲碁は想さんに教わりました。碓氷想さんです」
「……碓氷先輩? ……なるほど。俺ごとき勝てるわけがない」
負けて吹っ切れたのか、お父さんは玲哉くんを睨むようなことはなかった。
よかった……。……これで認めてもらえる、んだよね……?