こんな溺愛、きいてない!
……どうして遥先輩が?


「そんな顔するなよ」


「だって」


ダイニングテーブルに
鈴之助と向かい合って座っている
遥先輩が、

険しい顔を私に向ける。


「いいから、凛花、この写真見て」


鈴之助が差し出した写真に
視線を落として動きを止めた。


「え?……これって、私?」


手にしたその写真を見て、
思考が止まる。


「なに、この写真?」


写真に写っているのは
ランニングをしている私の姿だった。

でも……

あれ?

こんな写真、
撮ったことあったっけ?


いくら思い出してみても
全く心当たりがない。


これ、
鈴之助が撮った写真? 


と聞きかけて、口をつぐむ。


だって、
鈴之助がわざわざ朝早くに起きて

こんな隠し撮りしたような写真を
撮るはずがない。


……そう、これは、まるで隠し撮り。


すると、遥先輩が
写真から目をはなさずに 
ポツリと口を開く。


「それ、『奇跡の美少女』ってタイトルで
ネットで出回ってる写真」


…………え?


遥先輩の言葉の意味が分からず
しばらく、その写真をじっと見つめる。


奇跡の美少女って…


だ、だって、これは……


どくん、と心臓が鈍い音を立てて
頭のなかが真っ白になっていく。



「え、ちょっ…
ご、ごめん、よく分からない。

だって、
ど、どういうこと……?」


声は震えて
動揺は隠しようもない。


つまり、これは、
……隠し撮りされた私の写真?


でも、そんな……
隠し撮りなんて、どうして?


のどの奥がギュッと締まって
呼吸が、苦しくなっていく。


だ、だって、これは、
2回目に引っ越しをした
家の近くで撮られた写真で……


それなのに、今、鈴之助が
手にしている写真は

別の場所に住んでいた時の写真で…


ずっと……

見知らぬ誰かに、

……撮られてた?



その事実に、

背筋がゾーッと冷たくなっていく。



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