こんな溺愛、きいてない!
「は、はるか、先輩、

どういうこと? っていうか、
なにがどうなってるの?」


と、話している間もなく、

広いスタジオの真ん中に立たされて、

品定めされるように、
いろいろな洋服をあてたり、
変な色のカツラ合わせられたり、

ものすごくヒールの高い靴を
試し履きさせられたりして

私の挙動不審も頂点を極めていく。


「落ち着けよ、凛花。
なんで泣きそうな顔してんだよ」


「遥先輩、だ、だって、
なにがなんだかわからないよ」


喉の奥がギュッとしめつけられて、
なんだか、
こ、呼吸まで
うまくできなくなってきた……
 

く、く、苦しい……かもっ!


「やばいっ。
凛花、過呼吸おこしかけてる!」



「ほら、ゆっくりと息すって、
そう、落ち着いて、
ゆっくり、吐いて」


遥先輩に背中をさすられて、
失いかけた意識を必死で取り戻す。


と、鼻をくすぐる強い香水の香りに
顔をあげると、

そこにいるのは本郷社長だった。


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