こんな溺愛、きいてない!
うちのマンションの近くまで
戻ってきたところで
足を止める。


「家まで送ってくれなくても
大丈夫だよ?」


いくら家が近くても、
朝の忙しい時間だし、
遅刻させちゃったら大変だ。


「全然、余裕。
俺、凛花にだけは超、過保護だから」


目を細めて笑う
遥先輩の笑顔が朝陽に輝く。


くっ、ドキドキしちゃだめっ!


いつも意地悪なくせに、
こんなときだけ甘い顔して、
笑うのは、反則!


そもそも、
その整いすぎてる顔立ちが
いけないんだ。


キラキラしてる笑顔がいけないんだ!


いろいろ 
誤作動しちゃうんだから!


負けるな自分!


なんだかもう、
なにと戦っているのか
わからなくなってるけど。


いきなりキスしてくるようなひとに、
ドキつくなんて、

絶対にダメ!


「凛花、
なに怖い顔してんだよ」


「精神統一してるだけだから、
気にしないで」


遥先輩と目を合わせられないまま
エントランスへ向かおうとした
ところで

グイッと後ろから
肩を掴まれた。
< 64 / 288 >

この作品をシェア

pagetop