こんな溺愛、きいてない!

寄り道。

それから1時間後。

なんとかショックから立ち直り
遥先輩と向かい合う。


「ほら、いいよ好きなもの食って」


嬉しそうに頬を緩める遥先輩を
冷たい眼差しで
じっと見つめる。


「……遥先輩、
これ、冗談じゃなくて?」


「なにが?」 
 

「あのね、
ものすごーーーーっく、
私たち、浮いてることに、
気が付いてる?」


隣で席ではワイングラスを傾けて
スーツ姿の男の人と、
ドレスのような
ワンピースを着た女の人が
見つめあっている。


「1年待ちでも 
予約がとれないお店なのに。
ありがとう、あっくん」


「今日は君との記念日だから」


……一年待ち?

遥先輩はいったい
どんな手を使ったんだろう?


と、別のテーブルから
聞こえてくる会話は、

隣で聞いていても
酔いそうなくらいに甘い。


「沙知絵、今日のキミは
本当に綺麗だ。

キミに会えた僕は世界一の
幸せものだ」


「もう、やだ、隆治ったら!」



と、そのテーブルに乗った
リングケースに目がとまる。
 

も、もしや……と思っていると。


「沙知絵、
俺と結婚してくださいっ!」


「はいっ!」


うっわー、
やっぱりプロポーズだよっ。


そうだよね、だって、
窓から見えるのは東京タワーの夜景。

高い天井には
豪奢なシャンデリア、
真っ白い店内に、静かなサービス。

テーブルのうえには
キャンドルが灯されていて。


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