近くて遠い私たちは。
 部屋に入って来る義父から、上擦った声でそれらを受け取った。見るとキャミソールや上下で揃えた下着までが畳んで重ねられていた。

「母さんのとこに紛れてたぞ?」

「あ、ありがとう。お義父さん」

 義父が部屋から出て行くのを見送り、私は洗濯物を所定の引き出しに仕舞った。

 ポッカリと溜め息が浮かぶ。

 ーーそう言えば、サク。今日もお義父さんの部屋に入ってたもんなぁ。

 一体何の用があって入るのだろう?

 サクの窃盗は疑念だけで確証は無かったけれど、勝手に部屋に入っている事を知っていながら私は義父に黙っていた。

 サクが中学三年生の頃、引っ切り無しに女の子を連れ込んでいたあの日常を隠していたみたいに、告げ口をするようで言えなかった。



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