近くて遠い私たちは。
3.家族の崩壊と再生
1.守る存在の喪失
大学を卒業する年になり、平和な日常が続く平日の午後。それは何の前触れも無く、私を不幸のドン底へと突き落とした。
大学の講義を終えた昼休みの時間だった。いつもの習慣と癖でスマホを開くと、電話のアイコンに赤い⑤のバッジが付いていた。
アイコンを開いて私は目を疑った、五件の不在着信のうち、二件はサクで三件は義父だ。
世良 咲弥の名前に、容易く心音が高鳴り、すぐさまコールバックする。
プルルルル、と十回の呼び出し音を数えた所で溜め息が漏れた。
中々繋がらない。
一度膨らんだ期待が音を立てて萎んでいく。
サクが私に電話をくれる事なんて滅多に無いので、その事に舞い上がり、義父とサクの用件に関して全く考えが及ばなかった。
『もしもし、美紅か?』
電話に出たサクの声は、幾らか焦りを滲ませていた。
「……あ。うん、電話くれたでしょ? どうし、」
『義母さんが亡くなった』
「……え」
『トラックに跳ねられて。……ほぼ即死だって……、病院に搬送されたけど……っ、間に合わなかったらしい…ッ』
ーーえ…………。
私はただ呆然とし、その場に座り込んだ。
ーー今。なんて……?
腕がだらんと落ちて、床にスマホが転がった。落ちたそれから『もしもし、美紅?』とサクの慌てる声が遥か遠くで聞こえる。