近くて遠い私たちは。
 小二と小四。私と彼が仲良くなるのに、さほど時間は掛からなかった。

 初めて出来た義兄(あに)をサクと呼び、サクは私を美紅と呼び捨てにした。

 元来より生き物が好きなサクは、これまでにセミやバッタ、カエルやカニに川魚と、様々なものを捕まえては家に持ち帰っていたそうだ。

 それが私と兄妹になってからは、母が飼う事を嫌がったので、捕まえてもその場で逃がすという遊びにシフトしていた。

 母は虫はおろか、犬や猫といった動物もあまり好きでは無い。単純に家の中が汚れるのを嫌うからだ。

 私は大体いつもサクと一緒にいた。

 母が再婚してから住む所も学校も変わったし、土地勘のあるサクにくっ付いて様々な事を教えて貰った。

 学校への近道も、馴染み深い公園も、子猫を沢山飼っている散髪屋さんも、壊れた自動販売機も、サクは時に楽しそうに、時に悪戯っ子の瞳を細めて私に見せてくれた。

 そんなある日。学校の裏山で段ボールに入ったままの子猫を拾った。

 生き物を愛でるのが大好きなサクは、ひょいと子猫を抱き上げて笑った。

「うぉ〜っ、こいつスゲー可愛いっ!」

「いいなぁっ、サク。ねぇ、わたしにも抱っこさせてよ?」

「しゃあねぇなー、ちょっと待てよ、落とすなよ?」
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