Brillante amore! ~愛と涙のアオハルstory~
住宅地の中を1台の自転車が通る。
美玲の家は住宅地のなかにあり、立地のよい方なのだが、学校は田んぼの中にある。
まぁ、その方が吹奏楽部の騒音に関してのクレームはないからいいんだけど。
自転車を走らせていると、うしろから「チャリン♪」というベルの音がする。
振り返ると、そこにりんがいた。
「りんじゃん」
「おはよ」
私とりんは一緒に下校はしている。
ただ、家の距離がそこまで近くないので登校はしていない。
こんな風に登校するタイミングがあうのはしょっちゅうなので、ゆうには登下校どちらも一緒と思われていたけど。
「そういえば、けいのあの発言の弊害はあるの?」
…あの発言?
「喧嘩成敗したときの?」
「美玲、言い方(笑)」
あってはいるのね。
「まぁ、たまにあるけど」
何人かけいのことを好きな子に言われたけど、そもそもそれは自爆行為だし、私に言っても意味ないのではと思っていた。
「なに、もしやりんのとこに来たん?」
まさかと思いながら聞く。
「多少ね」
あるんだ。
「ごめん2人のことなのに」
「別に謝られても意味ないから」
そうか。
「まぁしばらくすれば飽きるでしょ」
「そうだね」
――そのしばらくがいつまでかはわからないけど。
「今日設楽先生来ると思う?」
話題を変える。
「うーん、びみょ」
休日練習は大体8:00にスタートし、17:00に終わる。
しかし、設楽先生がくるのは10:00頃のことが多い。
おうちの近い上川先生が学校を開けて職員室にいてくれているため、部活は出来るのだが。
「ポップス系とコンクール系両方やんなきゃだものね」
りん、よくわかってる。
「公民館の記念式典のやつは昨日決めたから、それと新入生歓迎ミニコンサートと重複してる奴やる?」
「そうね、午前中にパート練して午後合奏ね」
「うん」
「じゃあ準備室のホワイトボードに書きながら時間は決めてこ」
「御意、部長」
まさか登校時に予定をたてているとは誰も予想しないだろう。
でも、割とこれが日常。
そんなこんなで、学校につく。
「3年の駐輪場近くていいよね」
「それな」
まだどの自転車もない駐輪場に自転車をとめる。
「上川先生の車見た?」
あのかわいい軽ね。
「いや、見とらん」
「待たなきゃ」
「じゃ、その間に予定作成しよ」
「はいよ」
りんがメモ帳をとりだし、2人で階段に座って予定をつくる。
8:00ミーティング、清掃
8:15体トレ
9:00基礎合奏
-----これより先変更の可能性あり-----
10:00パート練習
12:00お昼
13:00パート練習
15:00合奏
17:00解散
パート練時の優先順位
新曲→その他ポップス→コンクール系
ここまで書き終えたところで、上川先生が来た。
「先生!おはようございます」
「お、おはようございます」
「今日の予定、こんな感じでいいですか?」
りん、行動早すぎ。
「いいと思うよ」
先生、その答え予想してました。
鍵を開けてくれた先生にお礼を言い、2人で音楽室に向かう。
窓から見ると、何人か後輩たちも来ているようだ。
「今日昼休み幹部会しないよね?」
私は楽器を取りだしながら、気になっていたことを聞く。
「そうだけど…なんで?」
「だって最近楽器吹いてないもん」
「あぁ、美玲は基礎合奏とかあるしね」
「そうなの!」
――あと、最近調子悪いのよね。
言いたくないことは言わずにいよう。
重たいバリサクを組み立てにいったりんを見送る。
よし、チューニング。
♪~
なんか音キモくね。
♪~
やっぱリップスラーしたほうが金管にとってはいいのよね。
♪~
ん、こんなもん。
チューナーの針が真ん中に来ているのを確認する。
さてと、新曲さらおうかな。