好きって言えたらいいのに

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 こうして何かと慌ただしかった文化祭は終わりを告げ、私はまた平穏な日常に身を戻していった。

 今日はBSの番組にヘイちゃんが出演する日だ。家に帰るとすぐに制服から部屋着に着替え、リビングのテレビの前へと急ぐ。
 聞き慣れたオープニングテーマとともに、キラキラと紙吹雪が舞うジャニスボーイの音楽番組が始まる。
 出た!ヘイちゃんだ!
 ヘイちゃんが先輩たちの曲を踊って歌う。ダンスの所作が、キリッとしているのに抜け感もあってすごくカッコイイ。
 何よりヘイちゃんが楽しそうだ。

 ヘイちゃんは私にあまり芸能界での仕事のことを話してはくれない。
 私がジャニスの話を聴こうとしても惚けて微笑むだけで、いつからか私もヘイちゃんに詳しく尋ねることはしなくなった。あくまで私の前では『魚屋ヘイちゃん』でいてくれる気のようだ。
 でも、こうして勝手に観ているのはいいよね。勝手にヘイちゃんの夢、応援させてください。

「かさね、あんたまた平志のテレビ観てんの?」

 私がヘイちゃんの夢舞台にうつつを抜かしていると、いつの間にか背後でお姉ちゃんが仁王立ちをしていた。
 お姉ちゃんが何かを言い出したそうとしていることを察知し、
「ちょっとだけ待って!今からインタビューがあるかもしれないから!」
と、私は慌てて制止した。

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