好きって言えたらいいのに

3


 無事にキラキラヘイちゃんを堪能して、お姉ちゃんに向き直る。ちなみに今日のインタビューは清原くんが答えていました。

「ごめん、お待たせしました。」
 正座をした私の前でお姉ちゃんが立ちはだかる。
「あんた、この前商店街の中で告白されたって?」
 うわっ、噂が広まるのは早いな。さすが井澤通り商店街。
「…うん。でも、断わった。」
「知ってる。それで、平志が割って入ったって?」
「…助けてくれたんだよ。」
 お姉ちゃんが大きなため息を1つ。

 お姉ちゃんは陣野みさき、大学2年生。大学のそばで一人暮らしをしているから、最近はたまにしか会えなくなったが、時々不意に帰ってくる。昔からぼーっとしていてヘイちゃんの後を追いかけてばかりいる私とは異なり、現実主義者でしっかり者の姉である。

「平志にも再三言ってんのに。宙ぶらりんなことしやがって。あいつ、本当人生宙ぶらりんでイライラするわ。うちの妹まで巻き込んでくれて。」
 お姉ちゃんがなんだかすごく怒っている。ヘイちゃんのことになるといつもこんな感じではあるけれど。下から見上げるととても威圧感があって怖さが倍増する。

「あんたもどうなのよ。平志のことはファンとして応援してるの?それともまだ付き合ってほしいとか考えてんの?」
「…へへへ。どうだろう?」
「はぁ。」
 髪をかき上げたお姉ちゃんがより一層大きなため息を吐いた。
「あんたねぇ、あいつはもう27。いいおっさんなのよ。あんたがぼーっとしている間に彼女の1人や2人、いるに違いないの!腐ってもアイドル、顔はいいんだから。あんたもあんな宙ぶらりんに振り回されてないで、自分の青春を謳歌しなさい!!」
 お姉ちゃんの畳みかけるような言動に、私は苦笑しか返せなかった。

 でもそうか、そうだよなあ。
 ヘイちゃんは10年間、私を待っていてくれた訳じゃないんだよね。ヘイちゃんはいつだって私を子ども扱いしている気がするもの。
 ヘイちゃんの特別になれているのかななんて、いい思い上がりなんだよなぁ。

 私は肩を落として小さくため息をついた。

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