好きって言えたらいいのに

3


「かさねのうちに行くの、初めてだー!」
「文化祭の野菜はかさねのお父さんが搬入してくれたもんね。ちゃんとお礼言うんだよ、夏葉!」
 テンションの高まる2人を連れて、商店街に入る。
 高校に入ってから親しい友人を家に招くのは初めてだった。少し緊張するけれど、ちゃんと2人のことを家族にも紹介したいと思った。
 途中、2人がコンビニでお菓子を買い込んでくれている間に、私は友だちを連れて帰ることをお母さんにメールした。
「ここだよ。」
 私は、八百八の前で立ち止まり、2人に家を指し示す。
「おっ!いらっしゃい!」
 お父さんがとてもうれしそうに接客中のレジカウンターから2人に声をかけてくれた。
「どうぞ、ゆっくりしていって!」
 店内で作業をしていたお母さんも満面の笑みだ。
「ありがとうございます!お邪魔しますっ!!」
 夏葉と正太郎が姿勢を正して、緊張気味に挨拶をするから、思わず私は声を出して笑ってしまった。

 2人を2階の部屋に案内して、飲み物を取りに行く。おばあちゃんが部屋から出てきて「うれしいねえ、かさねの友達なんてうれしいねえ。」と笑ってくれたので、なんだか少し泣きそうになった。
 友人…を家に招いたのは、ジャニス好きの子たちに利用されていたんだと知ったあの時以来だった。

 そこでふと思い出す。
 私、部屋にあのポスターを貼ったままだ!!
 慌てて階段を上る。転びそうになりながら、部屋に勢いよく飛び込む。
「あ、かさね。」
「あんた、ジャニスファンだったの?」
 時すでに遅し…。
 2人は私の部屋に貼られた、昔のヘイちゃんたちが写るポスターを眺めてニンマリと笑っていた。
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