若葉マークが外せない~政略結婚の落とし穴~
 昨日とは打って変わって麗らかな昼下がり。

「……ん」

 途中で気絶するように眠ってしまったらしい私は、窓から射し込む柔らかだけど眩しい光に目を覚ました。重だるい体を起こし、眠い目を擦る。空調の効いた部屋は適温に設定されていて、再びベッドに沈み込みそうになった私はふと枕元のデジタル時計に目をやった。

「うそっ。もうこんな時間!」

 只今の時刻はお昼の1時過ぎ。どうやら朝の4時すぎまで離してくれなかったお相手はもう仕事に行ってしまったらしく、真新しいベッドの私の隣はぽっかり空いている。

「仕事! ……は、寿退社しちゃったんだっけ」

 私、初めてだったのに一人にするだなんてあんまりだ。まあ、こうなることは予想の範囲内だったから、私は初めての家事をするべくベッドから起き上がった。

「……へっ」

 気絶している間にお風呂には入れてくれたようで、いろんなもので汚れていた私の体は綺麗さっぱり洗われている。ただ、全裸のままでベッドに戻されていた私はベッドにまだ敷かれている汚れたシーツを目にして、思わず間抜けな声を漏らした。

「これって……」

 やっぱり、あの人は意地悪だ。今日から……、ううん。昨日から私の旦那さまの夏彦(なつひこ)さん。

「やっぱ、初めてって血が出るんだ……」

 確かに痛かったけど……、ちょっとだけね。

(平気なふりをしたけどバレバレだったんだ)

 そう思うと顔から火が出るような心地がした。
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