医者の彼女
夕方、先生が入ってくる。

医師「明日、転院していたただく運びとなりました。
主治医をお呼びしたので、詳しい説明は
先生からお願いします。」

そう言って病室のドアを開け、入れ違いに
和弥さんが入ってくる。

…まさか和弥さんが来るとは思わなかった。

心臓がキュッとなる。
ちらっと顔を見るけど、目は合わない。

和弥「今言われた通り、明日朝イチでうちに
転院することになった。喘息もまだ重度発作を
起こしやすく、意識不明の状態が1週間も
続いてたし、念の為、脳の検査もしたい。
色々考慮してうちの病院で見ることになった。」

淡々とした口調で言われる。
表情や口調からは何も感じ取れない。

病院には行けない…気持ちを込めて首をふる。

和弥「…悪いけど、これは決定だから。」

なんだろ、いつもの和弥さんじゃない…
冷たく、怖い声。
怖くて何も言えなくなる。

しばらくの沈黙の後、和弥さんが口を開く。

和弥「…何で家をでた?家にいろと言ったよな?」

「……。」

和弥「…あんなメモだけ残して、
何処に行くつもりだったんだよ?」

「……。」

イライラしてる。当たり前だけど…

でもあの人との事は言えないし、
うまくごまかせるほどの言葉も持ち合わせていない。

和弥「…じゃ、話を変えよう。
春川医師はお前の父親…なのか?」

核心をついてくる…でも、そうなるよね。
京介さんにあの状況のこと聞いたんだろう。

「……。」
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