早春
私は春の訪れを告げる太陽を、
嫌というほど見てきました。
その姿を目に焼き付けて、
次こそは見なくていいように細めてみたり、大きくしてみたり。
しかし、忘れたころにまたやってきて、
昨年の思いなど忘れてしまったように私を誘惑します。
ですが写真におさめるようなことは一度もありませんでした。
しかし、秋の、一番哀愁のある季節の何かは違いました。
それはいくら目に焼き付けようとも焼き付けられないそんな輝きを放っていました。
春の太陽や桜の匂いまでも散ってしまうそれに、
私は首ったけになりました。
それは私を誘惑などしません。
ただただ、そこに圧倒的な美しさと、存在感で佇んでいます。
さらに、毎日別の、全く異なった美しさを持っているのです。
初めてなにかを写真におさめた瞬間でした。
以降、それは私に様々なものをもたらします。
幸せや哀しみ、快楽や痛みまでそれによってもたらされます。
だた一つの感情しか動かなかった太陽とは違って、
それの手によれば何もかもが動かされます。

A.あなたは月です。
< 2 / 2 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

蛾

総文字数/272

詩・短歌・俳句・川柳1ページ

寝首

総文字数/495

詩・短歌・俳句・川柳1ページ

無鉄砲な夜に撃たれて

総文字数/253

詩・短歌・俳句・川柳1ページ

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop