女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順
「ひゃっ」
突然のぬくもりに驚きの声を出すと、その優しいぬくもりとは相反する舌打ちが聞こえた。
だから嫌なんだ。と、聞こえてきそうな舌打ち。
「アキ?」
立ち上がった晶は、遥を後ろから椅子の背もたれごと抱きしめていた。
遥の発言に呆れて席を立ったわけではなかった驚きや戸惑い、それを凌駕する嬉しさで声が震える。
「背もたれ越しじゃ」
「一丁前な口聞くな。振り返ったりしたら、頭突きをお見舞いするからな」
こいつの中で、ついこないだまで男性恐怖症だった記憶は、なかったことになっているのか。
たまに感じる。
薄い氷の上を歩いているような、そんな危うい関係。
それなのに触れたい、もどかしい気持ちが混在する。
「だって、アキが、遠い、です」
胸がギュッとつかまれて、心はさざめく。
二人の距離がなくなって、境界がなくなるような状況になると困るのは、自分だろうが。
晶は自分と遥との、想いの違いくらいわかっていた。
遥が自分に求めているのは、失った家族の情愛のようなもの。
けれど、俺は。