女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順
あからさまに沈んだ声色に、面倒くせーやつ。と、心の中で悪態をついて口を開く。
「ベッド、買えばいいんだろ」
「え?」
「いや、すぐは無理だが。そのうちな。今のは、もともと小さいと思ってたんだ」
なにを言い訳して。
ここに越してきて何年も、あのベッドで不自由していなかった。
一人で寝る分には、十分なんだ。それを。
目を丸くして、みるみる明るい顔に変わる遥がいつもの、お宝を発見したオモチャのロボットのような動きをする。
「わかりました! それまでの辛抱ですね」
辛抱って、なんのだよ。
こいつの頭の中を覗いてみたいわ。
心の中でため息を吐きつつ、嬉しそうな遥にとりあえずは良しとしようと胸の内を誤魔化した。