女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順

 あからさまに沈んだ声色に、面倒くせーやつ。と、心の中で悪態をついて口を開く。

「ベッド、買えばいいんだろ」

「え?」

「いや、すぐは無理だが。そのうちな。今のは、もともと小さいと思ってたんだ」

 なにを言い訳して。
 ここに越してきて何年も、あのベッドで不自由していなかった。
 一人で寝る分には、十分なんだ。それを。

 目を丸くして、みるみる明るい顔に変わる遥がいつもの、お宝を発見したオモチャのロボットのような動きをする。

「わかりました! それまでの辛抱ですね」

 辛抱って、なんのだよ。
 こいつの頭の中を覗いてみたいわ。

 心の中でため息を吐きつつ、嬉しそうな遥にとりあえずは良しとしようと胸の内を誤魔化した。
< 14 / 160 >

この作品をシェア

pagetop