女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順

 遥の晶への気持ちを聞いた時、歯止めが効かなくなった。
 キスをして、それから遥の肌に触れた。

 手に触れた滑らかな感触に、自分を見失いそうになった。
 気がつくと腕の中で、遥はカタカタと震えていた。

 あの時の不安そうな、晶に怯えているような顔はもう見たくなかった。

 それなのに、遥は晶と寝たいと訴える。

 なにもわかっていない純粋が故かと、思っていたけれど。

「アキも気を付けろよ。年行ってからハマると、痛い目に遭うからな」

「なににだよ」

「女に」

 ヒュッと息を吸い込んで、目を見開いた。
 なにかが、崩れていく音を聞いた。

「悪い。余計な心配が過ぎたな。顔色が死んだような色してるぞ。アキ、今日の仕事は平気か?」

「ああ」

 それだけ言うと直樹から視線を逸らし、仕事の資料を手にした。

 そしてなにも考えないように、仕事に没頭した。
< 18 / 160 >

この作品をシェア

pagetop