女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順

 仕事を終え、マンションに帰れたのは遅い時間だった。
 ソファでニュース番組を見ていても、ほとんど頭に入ってこない。

 プツッと消されたテレビから顔を上げると、遥がリモコンを片手に立っていた。

「どうして消したんだよ」

「見ていないようでしたので」

 考えたくない心の内にある思いから、目を背けていたかった。
 晶の思いを知ってか知らずか、遥はソファに座った。

 静かな部屋の中は否応なく、直樹の言葉を思い出す。

「やっぱり夕食をアキと食べれないのは、寂しいです」

 ポツリと呟かれた言葉に、晶は自分の髪をかき回す。

「ごめ、んなさい。アキも忙しいんですよね」

「ああ」

 絞り出した声は、情けなく掠れる。

 晶はいつもの一人掛けのソファに座り、遥は二人掛けのソファの端に脚を体に引き寄せて、丸めた体制で座っている。

 寂しそうな遥の姿を見ているのも、自分自身の不安定になりそうな心持ちも、我慢ならなくて小さく訴えた。

「ハル。こっちに来て」

「え」

 目を丸めた顔で、遥は動き出さない。

「嫌か」

「嫌です。だってハグは、するもんじゃないって」

 こいつ。
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