女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順

 いつの間にか遥が近くに立ち、晶を見下ろしていた。

「どうした」

「あの、これ」

 遥は、新しいシャツを晶の前に差し出した。

「ああ。せっかくだから、着替えるか」

 躊躇なくシャツを脱ぐ晶に、遥は慌てて顔を背けた。

「なに」

「なにも」

 顔を背けたまま、晶から距離を開けて座ろうとすると腕を引かれた。

「離れて座らなくてもいいだろ」

 甘い少しだけ拗ねたような声を聞いて、胸がキュンとする。
 晶に抱き寄せられ、「あの、シャツを着てください」と訴える。

「ん。まあ」

 と、言いながら、そのまま腕の中で聞かれた。

「湯たんぽと、大きいベッド。本当にほしいか?」

「それは」

 突然の質問に、正解がわからない。

「毎日、今のベッドで一緒に眠るのなら、問題ないんだろ?」

「そ、それは」

 言葉を濁す遥の首すじに、晶はキスを落とした。

「ア、キ?」

「シャツを着てても見えて、直樹にからかわれた」

 晶の首元の赤い痕が艶かしく、半裸の今は嫌でも目に入る。

「ごめ、んなさい」
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