女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順

 遥を腕に抱く晶が「やっぱり、素のハルの匂いがいい」と呟いた。

「えっ。嫌だ。嗅がないでくださいよ」

「嫌だね。口直し」

 唇は、ゆっくりと重ねられた。
 甘やかすように触れる晶の唇から、どうにか逃れて訴える。

「アキの、話」

「ああ。うん」

 抱き直した晶は、一呼吸置いてから話し始めた。

「前にハルといるところを、クソババアに見られただろ。あれは、やっぱりまずかった」

 突然、ラスボスが現れたような恐怖に慄き、晶にギュッとしがみつく。

 晶は、遥の頭を撫でながら言った。

「ちゃんと守るから」

「アキ……」

 真っ直ぐに向けられる愛情が、なんだかくすぐったい。

 晶は固い口調で、続きを話した。

「ハルの勤め先が調べられた。なにをするか、わからない。最近、なにか変わったり、変だと思う出来事はないか」

「変わったり、変だと」
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