女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順

「あの人、の話はそれだけ、ですか」

「ああ」

「その方は、私をご存じなんですか」

「ああ、まあ、そうだな」

「どうして」

「それは」

 向こうが勘付いて「大事な方が?」と言われた。
 それを暗に黙認しているだけで、自分からなにか話したわけではない。

 それをどう説明すれば。

「アキのお母さんから聞いたのなら、コブ付きの女性にたぶらかされていて、私はそのコブの方と思ってるんじゃ」

 忘れていた笑い話をされ、「ハハッ」と声を漏らす。

「笑い事じゃありません! だからこそ、年相応に見られるようにって」

 ああ、そうか。
 こいつはこいつで、童顔なのはコンプレックスなのか。

「ハルは、そのままでいい」

「どうせ着飾っても、臭くなるだけですもんね」

 口を尖らせる遥に、ククッと喉を鳴らす。

「遅くなる。もう寝ようか」

 時計の針は、11時を指そうとしている。
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