女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順

「な、なんですか」

 開けられた扉に驚いた作業長が、こちらに顔を向けた。

 すぐに離されたが、一瞬だけ見えた。
 作業長の手が、遥の手の上に置かれていたところを。

「アキ」

 揺れる瞳を向ける遥に、胸が締め付けられ、激昂しそうになった。

「あなたは誰ですか。部外者が入っていい場所じゃない」

 先に声を荒げたのは、作業長だった。
 遥は健気に、晶を擁護しようと口を開いた。

「あ、あの。アキは」

 今にも殴りかかりたい気持ちを、グッと堪え、努めて冷静に話した。

「不躾にすみませんでした。保護者代わりに一緒に暮らしている、弁護士の高崎晶です」

「ああ、あなたが」

 聞き及んでいるのか、先ほどよりは警戒心を解いたような作業長に事の経緯を説明する。

「パートの方の厚意に甘え、休憩室で待たせていただいていましたが、戻るのが遅かったので」

 決まりの悪そうな顔をさせる作業長に、畳み掛ける。

「御社はセクシャルハラスメントの教育に、力を入れておられますか」

「はい?」

 声に、再び怒りが僅かに滲んだのがわかった。
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