女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順

「軽率な行動は、身の破綻を招きます。作業長として、思慮深い行動を」

 冷酷な眼差しを向けると、作業長は居心地の悪そうな表情を見せ、目を逸らした。

 晶はフッと表情を緩めてから、遥を呼ぶ。

「遥。行こう」

 そこから、遥をまともに見られずに、家路に就いた。

 晶の歩く後を、懸命についてくるおぼろげな気配を感じながら、マンションの玄関まで無言で歩いた。

「アキ、仕事に、戻らなきゃいけないんじゃ」

 息を切らしている遥の言葉に、胸が締め付けられる。

「ああ、そうだな」

 本当は今すぐに抱きしめて、キスをして。
 遥の全てを、自分のものにしてしまいたい。

 わかってる。
 本来なら、優しい声で「大丈夫だったか」と、いたわらなければならないことくらい。
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