女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順

「どうだ。撫でた方がいいか?」

 優しく指先を手に沿って動かすと、遥は肩を揺らした。

「嫌か。悪い」

「アキは、大丈夫です。ただ、くすぐったくて」

 思わぬ賛辞をもらったように感じ、胸を鷲掴みされたみたいだ。
「ハハッ」と力なく笑う。

「直樹さんが、訓練してくださったのに」

「は?」

「アキに見つかるとうるさいからって、アキが席を外している時に」

「だから、なにを」

 苛立ちから低い声が出て、「ごめん。怖がらせたいわけじゃない」と謝りの言葉を口にする。

「外に出て起こり得る、ある程度の距離感というか」

「ああ」

 直樹は善意でやっていたのはわかるのだが、苛立って仕方がない。

「道を歩いていて、男性と軽く肩がぶつかった場合、とか、握手を求められた時、とか」

「それで?」

「その、直樹さんで過呼吸や蕁麻疹が出るようなら、仕事をさせられないって」

 直樹と話せるようになれればと、慣れるように仕向けたのは自分だ。
 だが、触れて平気かどうかまで試してほしいとは、頼んでいない。

 遥が外で仕事をするのなら、直樹の判断は正しいだろう。
 だからと言って。
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