さくらいろの剣士1
 なぜ笑顔で私を見ることができるのか?去年の夏も、秋も冬も、私のチームに負けて悔し泣きしていたのに。
湧き出る疑問を無視して、主将が手を差し出してきた。
「今日から仲間だから。よろしく。」
彼の名前は波月。海南の主将だ。確かに強くてしっかり者だ。
でも、私は違う姿を探した。彼も、私の「お目当て」に気づいて、親切に教えてくれる。
「あぁ、正影なら部室に居るけど。」
部室がどのなのか分からない。
探していると、ひとつの扉が開き、中から1人の男子が出てきた。なるほど、あれが男子の部室らしい。
彼と目が合った。
ほかの男子と比べて小柄で口数も少ない。でも、剣を交えて勝てるものはいない。何度か瞬きをしたあと、彼が言った。
「海南の名前で試合するんだったら、勝手に舞い散るなよ?さくら。」
目が冷たく笑っている。
「分かってる。」
私はそう言って頷く。
「ならいいけど。」
そう言って音もなく近づいてくる彼は、誰にも真似できない、異様な雰囲気を漂わせた。
「正影凌太」
「海南の異端児」は、誰と比べても小さな私を黙って見つめ続けた。
面の奥には、私の知っている彼が、確かにいた。
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