さくらいろの剣士1
「ただいま。」
「…いまっ…。」
まだあまり慣れていない玄関で靴を脱いでいると、凌太が私の隣をすり抜けてさっさと2階にあがってしまった。
「さくらちゃん、お帰り。」
目の前の部屋からおばあちゃんが出てきた。
「凌太くんと一緒だったんだね。どうだった?剣道部。」
どうだったか聞かれても困る。
「いや、前から知ってるチームだし。凌太もいるから入部するけどいい?」
「もちろん。試合、応援行ってもいい?」
「いいけど。全国大会とか、遠いよ?」
「え?」
おばあちゃんは、私の実力を全く知らない。だって、今朝、私はここに来たのだから。
「あ、いや、まぁまぁ、頑張るわ。いろいろ。」
誤魔化して笑うと、おばあちゃんも笑って頷いた。
階段をあがると私の背中におばあちゃんは声をかける。
「新しい制服とかばん、机の上に置いてあるから。」
「うん。ありがと。」
ますます気が重い。
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