アーシュベルク王国の王女と魔法使い。
鳥の王
[鳥の王]

貴族の少女であるセリカ·キセノンは自宅の広い邸宅の一室に図書室を作り本を集めていた。
もしかしたら本の良さは未知との遭遇にあるかもしれない。とそうセリカは感じた。

医薬品や生薬の記録、医療史、民族学など。
それを読みながら、セリカは過ぎ去った文明、たとえばガロの偉大さを考える。が、数刻前にミモザ·ルーベックが話した逸話はすこし驚かされた。

「むかしのアーシュベルク人は鳥の王を崇めていたんだよ」
「それはどういう意味合い?」ケーキを食べながら。
「鳥の王。
正体は不明だが、かつてのアーシュベルク人は鳥の王に捧げ物をしたんだよ」
「人身御供ですね」
「よく知ってるじゃないか」くっくと笑うミモザ·ルーベック。
「書物にはうろんな知識があるものですよ」

うろんという言葉の意味は怪しい内容という意味合いという誉め言葉だ。
だからかセリカは読書の醍醐味は未知との遭遇による感情の高揚にあるのだと思う。それが記憶を変え人格を少しずつ変化させる。記憶の欠如は未知の感覚を呼び起こし、しかし知らない、ということを自覚することは難しいのだ。
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