もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
嶺に抱きしめられた私のサンダルには砂がたくさん入っている。

いつもは先に恭が自分の足を洗うと、振り向いて後ろで順番を待っている私に視線を向ける。
私が水道に近づいて、恭につかまりながら足を流してもらう。

外の水道にはいつもタオルを私が用意していて、恭が私の足を洗い終えるとしゃがんで足を拭いてくれる。大きな肩に手を置かせてもらって、私の正面に大きな体を小さくしてしゃがむ恭。
恭は私の足を拭くと、同じタオルで自分の足を拭く。

はじめは恭に足を触れられることに抵抗があり、恥ずかしくもあったのに、今では慣れてしまった。そして、私たちは家の中に入ると、今度は洗面所に向かい手を洗う。
この時も、恭が先に手を洗う。その後ろで私は順番を待っている。


いつもは・・・。

今まではそうだった・・・。


家の中に消えた恭の後ろ姿を見ながら私はそんなことを考えていた。
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