俺様社長は溺愛本能を隠さない
──駐車場に着き、いつもの白い車の助手席に座った。
シートベルトをして膝にハンドバッグを置くと、二人きりの空間にやはり少し緊張してくる。
ここに桃木さんが座ったのか……と一瞬考えたけど、男の子だと分かってからは気にしていたのがアホらしくなった。
「……桃木さんが男の子だって、教えてくれたって良かったのに」
つい、思ったことが口に出ていた。
でも桃木さんの正体を教えてくれていれば、今日こんなに泣く必要はなかったのだから、本当のことだ。
都筑さんはハンドルに手を添えたまま、発進はせず、私を見た。
「悪い。わざわざ教える必要があるってことすら頭になかったな。俺の中ではずっと男だから」
「それでも、です。私はずっと女の子だと思っていました。都筑さんが女の子と食事して、わざわざ職場に呼んで、ドライブに誘っているものだとばかり」
「そんなわけないだろ。どうして有村を好きなのに他の女とそんなことするんだよ。おかしいだろ」
私の不安を嘲笑うかのように、都筑さんはフッと鼻で笑った。
だから、ずっと都筑さんのことおかしいと思ってたんですって。
でも全部勘違いだった。
「……じゃあさ、今まで有村が悩んでたのって、桃木に嫉妬してたからなのか?」
ずばり聞かれ、顔が熱くなる。