俺様社長は溺愛本能を隠さない
でも、これは誤魔化したところでどうしようもない。
勝手に勘違いをして嫉妬に狂い、泣いたり甘えたりと情緒不安定になっていたのは私だ。
「そうですよ。あれじゃあ私よりも桃木さんの方が特別なのかなって、思うじゃないですか」
「……そうか」
あれ……?
素っ気ない返事をされただけで、彼はすぐにエンジンを入れ、車を出した。
車の通りはほとんどない。
私は気まずくなって黙ったが、マンションへ向かう道がいつもと違うことにすぐに気付いた。
「あの……都筑さん。さっきのところ、左だったんですけど」
助手席の窓を指で示しながら運転席に話しかけても、彼はこっちを見ない。
その代わり、押し黙ってスピードを上げる。
「都筑さんってば」
「行き先、俺の家にしないか」
「……え」
私は左をさしていた指をそのままに固まった。
都筑さんの家……?
このまま、一緒に?
え、それって、そういうこと……?