俺様社長は溺愛本能を隠さない
静まり返る室内。
さあ、言って。貴方はどうして恋人を作らないの。
「いらないからだ」
彼はすぐにそう答えた。
当たり前だろ?と言わんばかりの顔をしている。
「……どうしていらないんです?」
「いたら邪魔だろ。やれ電話しろメールしろ、デートしろプレゼントしろ。恋人ってのはこっちの時間を容赦なく削ろうとしてくる。起業してまだ数年なんだからそんなことに使ってる時間はない」
「……私とドライブする時間をそういうことに充てたらいかがかと……」
「それは別だ。俺は有村には隣にいてもらわないとダメなんだ」
「……えーと、それでも彼女は?」
「いらない」
ギャラリー四人と私は目を合わせた。
だから言ってるでしょう。この人はおかしいんですよ。
私は「ね?」と四人に視線を返した。
こうやって極限までこっちに期待させてから、彼女はいらないと言い張る。
お前は隣に置いてるが彼女にする気はない、と。ほんとムカつく。
完全に気持ちを消し去った今だから、冷静でいられるけど。