俺様社長は溺愛本能を隠さない



──別室で都筑さんとトワイライト・ミシェルとの打ち合わせが始まり、私はお茶だけ出して皆のところへ戻ってきた。

四人の視線に迎えられ、私も彼らと混乱の気持ちを共有したくて改めて向き合った。

「……さっきの何だと思います?」

そう尋ねると、彼らも顔を見合わせた。
堤さんがゴールドのイヤリングを揺らしながら答える。

「有村さんのこと好きってことなんですかね……。いや、でもちょっと社長の恋愛観が謎すぎて……」

佐野さんも首を傾げ、金沢さんは「僕に聞かれても」と遠慮し、残る若林君に視線が集まる。
若いデザイナーで、彼女なし。
この中では若林君が一番都筑さんに近い。

「……いや、僕もさっきのは嫉妬なのかなと思いましたけど……でも社長、有村さんみたいな綺麗な女性(ひと)とずっと一緒だったのに今まで何もしなかったわけですよね。そこがもう僕は理解不能なんで……。でもあの反応はどう考えても有村さんの彼氏気取り……けど有村さんに恋人はいらないって断言してたわけだし……だからつまり……」

つまり?

「社長にとって有村さんは、所有物って感覚なんでしょうか」

若林君はそう言って顔を上げた後、おそらく般若のような私の顔に驚いたのだろう、目をまん丸くさせて縮んでいった。

他の三人も私の顔を覗き込んで慌ててはいるが、誰も「そんなことないよ」というフォローはしてくれない。

所有物かぁ。
へぇ、そっかぁ、なるほどぉ。

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