俺様社長は溺愛本能を隠さない

やっと席についたはずなのに、都筑さんはデスクの上の少ない荷物を革のバックにまとめ始めた。

「有村。ドライブ行くぞ」

まただ。

彼はアイディアを掴むためにいつもドライブへ行こうとする。

やたらと私を助手席に誘うのだが、乗ったら最後、デザインとは関係のない話を聞かされながら海沿いを一周するまで付き合わされる。

さて今日はすんなり断れるかな……。

「おひとりで行ってきて下さい。私はまだやることがあるんです」

「後にしろ」

私が断りながら都筑さんの後ろを通過しようとすると、彼は手首を捕まえてきた。
いきなりバランスを崩されたせいで彼の方に倒れたが、絡めとられるように体をキャッチされ、なんとか無事。

「もう、危ないです!」

弾みで彼の膝の上に乗ってしまい、顔を上げると、至近距離に綺麗で憎たらしい顔があった。
思わず強張ったが、すぐに立て直す。

「ちょっと、都筑さん」

「ドライブ行くぞ」

「だから行けませんって。私、遊んでる暇ないんです」

「俺の世話が仕事だろ。お前が横にいないと気が散るんだよ」

「それ、おかしいですよ。あと私の仕事は都筑さんのお世話だけじゃないですから。とにかく膝から降ろして下さい」

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