俺様社長は溺愛本能を隠さない

「都筑さん、大丈夫ですか?」

私が久しぶりに都筑さんに優しい声をかけたからか、皆がこっちを見た。
あれ、普通ってどうだっけ。
舞い上がりすぎて分からなくなっている。

「ダメだ。少し海行ってくる」

都筑さんはタブレットを荷物に詰め始め、背もたれに掛かっていたジャケットに袖を通す。

いつものドライブだ。

どうしようかな、今日は桃木さんがいるし、助手席に付き合うのは難しい。
厄介な子だけど、さすがに放っぽらかして出かけるわけにはいかない。

都筑さんだからそこまで気は遣えないだろう。
ここは私がちゃんと断らないと。

「ちょっとドライブ付き合って、(ともえ)

「はぁい」

──あれ?

都筑さんが手招きで指名したのは、桃木さんだった。
私のすぐ隣にいた桃木さんは、笑みを浮かべながら立ち上がり、ふわふわのコートに袖を通し始める。

「もう、仕事中は名前で呼んじゃダメだって言ったの京さんじゃないですかぁ。ダメですよ、巴って呼んだら」

「あ、そうだった、悪い。つい癖で。先行ってるぞ、早く来い。……じゃあ有村、後頼んだぞ」

「……はい……」

都筑さんはオフィスを出て、桃木さんを待たずに駐車場の車へと出て行った。

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