俺様社長は溺愛本能を隠さない
「僕の予想ですけど……多分、“元カノ” なんだろうなと」
ああ、それだ。間違いない。
驚くほどしっくりきた。
腑に落ちた後、それは内側から胸をえぐるように暴れまわり、息をするのも苦しくなる。
元カノなんてありふれたものなのに、あの二人がそうだと聞かされると、私は一気に蚊帳の外に追いやられた気分になった。
優越感が劣等感へと変わっていく。
思い出してみれば、疑いようがなかった。
学生時代の後輩なのに今まで連絡をとるような関係で、簡単に採用して、ホテルディナーにも行って。
名前呼びも、二人でドライブも当たり前。
桃木さんが高圧的なのは、彼女にとって私は二番手の女に過ぎず、彼女はすでに、私よりももっと都筑さんのことを知っているから。
あの情熱的なキスも、その先も。
むしろどうして今まで気付かなかったんだろう。
「……有村さん」
若林君は、私にハンカチを差し出していた。
……ああ私ったらまた、若林君の前で泣いている。