俺様社長は溺愛本能を隠さない

「僕の予想ですけど……多分、“元カノ” なんだろうなと」

ああ、それだ。間違いない。
驚くほどしっくりきた。

腑に落ちた後、それは内側から胸をえぐるように暴れまわり、息をするのも苦しくなる。
元カノなんてありふれたものなのに、あの二人がそうだと聞かされると、私は一気に蚊帳の外に追いやられた気分になった。

優越感が劣等感へと変わっていく。

思い出してみれば、疑いようがなかった。

学生時代の後輩なのに今まで連絡をとるような関係で、簡単に採用して、ホテルディナーにも行って。
名前呼びも、二人でドライブも当たり前。

桃木さんが高圧的なのは、彼女にとって私は二番手の女に過ぎず、彼女はすでに、私よりももっと都筑さんのことを知っているから。

あの情熱的なキスも、その先も。

むしろどうして今まで気付かなかったんだろう。

「……有村さん」

若林君は、私にハンカチを差し出していた。

……ああ私ったらまた、若林君の前で泣いている。

< 82 / 110 >

この作品をシェア

pagetop