俺様社長は溺愛本能を隠さない
若林君はやはり私を慰めてくれるらしく、控えめに背中に手を回してくれた。
「僕、社長のことは前からうすうす神経の少ない人だとは感じていましたが、今回の有村さんに対するやり方はさすがに酷いと思います。好きだと言っておきながら言葉選びはいつも間違っているし、思いやりが足りないし、そして極めつけに新しい秘書を連れてくるなんて……」
私が思っていることそのものだ。
代わりに若林君が怒ってくれているおかげで、私は気持ちが落ち着いていく。
「……仕方ないです。私が婚活するなんて言ったので、秘書を辞めないか心配させてしまったみたいで。辞めないってちゃんと言ったんですけどね」
告白されたはずなのに、ちゃっかり私の穴埋めを用意していたなんておかしな話だ。
都筑さんは自分のやっていることが矛盾していることに気付かないのだろうか。
それとも、私がいなくなったら代わりは桃木さんがいるから、それでいいってことなのかな。
そしたら告白の相手も、桃木さんに変わってた?
「桃木さんのこと、社長は後輩って言っていましたけど……僕、少し違うんじゃないかと思うんですよね」
ちょうどそれを考えていたところだ。
桃木さんはただの後輩にしては、都筑さんと距離が近すぎる。
二人の関係はどこかおかしい。
「違うって、どういうこと?」
前のめりになって聞いた。