俺様社長は溺愛本能を隠さない

足元が一瞬宙に浮き、天井を仰いでから都筑さんの腕の中に収まる。
お姫様抱っこは勘弁してほしくて私は暴れ、どうにか床に足はつけさせてもらった。

もう、なんか、死にそう……。

「巴! ふざけんな! 有村に手を出すなとあれほど言っただろ!」

鬼の都筑さんも怖いが、でも一番訳が分からなくて怖いのは今は桃木さんだ。
私を虐めぬいたかと思えばあんなハレンチなキスをしてきて。

当の本人は都筑さんに怒鳴られようが全く意に介さない。

「もぉ、京さん大きな声出さないで。だってあんまり大事にしてあげてないみたいだから、奪っちゃおうかなって思ってぇ」

「大事にしてる! 本当に怒るぞ!」

「ふふ、もう怒ってるじゃないですかぁ」

何……どういうこと?

「有村!」

え! 私!?

ついでにすぐそばで怒鳴られ、肩が上下した。

「お前も迂闊すぎる! 簡単に男と二人きりになるな!」

「……え? だって、桃木さんは女の子だし……」

……あれ?

嫌な予感がよぎったところで、正面にいる桃木さんをもう一度見直してみる。
上から下までふわふわの女の子だと思っていたけど、その目付きは獲物を狙う狼そのもの。

もしかして、桃木さんって……

「巴は男だ!」

ちょっと待ってよー!

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