俺様社長は溺愛本能を隠さない

もう目が点になって戻らない。
私達のやりとりを見て高笑いをしだす桃木さんの声がキーンと響いた。
彼女の声には少し野太い響きが混じっている。

「え? え? 男? うそ……だって都筑さんの元カノで、ホテルディナーとか、ドライブとかって……え?」

「は!? なんでそうなる! 俺は、有村にいつも無理させてるから秘書を辞めたいんじゃないかと思って、そうなったら困るから、とにかく誰か手伝える奴を探して巴を連れてきただけだ。 ホテルではその話をしてたんだよ。昼間だって、有村に迷惑かけちゃいけないと思って、暇そうな巴をドライブに付き合わせただけで。……結局、有村じゃなきゃダメだったけど」

「……ええ……」

「有村のことは俺が口説いてるから、絶対に手を出すなと言ってあったのに。やたらとベタベタし始めるからおかしいとは思ってたんだ。くそ、油断した」

「……じゃあ、桃木さんって、私に嫌がらせしてたんじゃなくて……?」

「嫌がらせなんてしてないよぉ。初めて莉央さんと会ったときにビビッときちゃって。本当はフリーの仕事があるし、ディナーだけ奢らせて秘書の話は断ろうと思ってたんだけどぉ、莉央さん見たら気が変わったの」

「最初から有村目当てだったのか!? ふざけんな!」

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