希望の魔法使い

桜舞し君は美し




「今日からここに通うのか…」

桜舞う春の4月。
校門の前で1人の少女が長い髪をなびかせ佇んでいた。
透明で綺麗な宝石が埋め込まれた杖をカバンにしまい、もう一度大きく息を吸う。
暖かい風が吹いた。



ーことの始まりは先月。

「えっ…お母さん…なんて…?」

「美月も来月から念願ののどか学園に通えるのよ!」

「ほっほんと!?」

座っていたイスから勢いよく立ち上がり美月は身を乗り出した。

「ほんとよ、嘘言ったってしょうがないでしょ。推薦状が届いたのよ、ほら」

「ほ、本当だ…」

のどか学園ーそれは数ある魔法学校の中でも名門中の名門。
魔力の高い人間のみ入れるとされる超難関校の1つ。
魔法使いなら誰でも憧れるのどか学園。

「私も春から憧れののどか学園に…!」

「ふふ、お祝いの…流れ星《シューティングスター》」

杖の宝石を虹色に光らせるとカラフルで綺麗な光が降ってくる。

「ありがとう、お母さん」

「よかったわね、美月」

「うん…!」



ーそんなこんなで転入したての今日。

「わぁ…入口からしてすごい広い…さすが名門中の名門、のどか学園…!通うの夢だったから嬉しいなぁ…」

「ふふっ」

いつからいたのか。
ショートヘアの綺麗な女の子が笑った。

「あ、ごめんね。すごくいい笑顔してたからつい」

(わぁ、きれいでかっこいい子だなぁ)

美月が見惚れていると彼女が問いかけた。

「あなたもしかして1年生の子?入学式とっくに始まってるよ、案内してあげるね」

そう言って美月の手を引こうとする。

「えっあっ、ちが…っ」

その時向こうから大きな風が吹いてきた。
吹き飛ばされそうなくらい強い風。

「わっ…!な、なに…!?」

「あいつ…」

また1人、風と共に現れたのは見るからに元気そうな少年。

「朱音こんなとこに居たのかよ探したぜ!」

朱音と呼ばれた少女が呆れ気味にため息をついた。

「涼太…あんたねぇ…」

と話し始めた朱音の横にいる美月の姿が涼太の目に映った。

「走ってくるのはいいけど学園内で無闇に魔法使うな!あんたは魔法荒いんだから!」

そんな朱音の言ってることを無視して美月の方へ距離を詰めて。

「あれっ君1年生の子?かわいいね〜!」

太陽のような笑顔でにかっと笑った。

「え、えと…初めまして…?」

そんな2人のやり取りを見て朱音はため息をついた。

「全く…人の話を聞きなさい!」

可愛い子見るとすぐそうなんだからとぶつぶつ言う朱音にひっぺがされた涼太。
ちぇ〜と不満そうにほっぺを膨らましたかと思えばはっとした顔をして話を始めた。

「そうだ!俺お前呼びに来たんだよ!入学式の手伝いで!!」

何だか慌てた様子で涼太は話す。

「それはジャンケンに負けたあんたが担当になったでしょ。」

美月をよそに2人は話を続けた。

「違う違う!生徒が暴れて手に負えなくなって…!いいからとにかく来てくれ!!」

そう言うとすぐ杖を緑色に光らせたと思うとものすごい勢いで走って行った。
荒くとても元気な魔法で。

「はぁ!?ちょっ…仕方ない行くか…あなたも一緒にね」

「えっ!?いや私は…」

その続きを言う暇もなく朱音も杖を緑色に光らせ美月の手を引いて走り出す。
丁寧で繊細な魔法で。

(2人ともすごい魔力…じゃなくて…誤解をどうやって解こう…)

そんな事をぼんやり考えながら手を引かれた美月は朱音の後ろを走った。



春の日差し。
風で桜が舞っている。
3人が走り出した同時刻、校舎の裏で1人の少年が木漏れ日を浴びていた。

「…もう17の歳か…」

その声は風にかき消された。



暖かい風が吹く。
季節はもう何度目の春だろう。
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