イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
じゃあね、と慌ただしい挨拶を残してぶつりと通話は途切れ。
非常階段という静寂が戻ってくる。
青白い蛍光灯を見上げながら、吐息をついた。
「焦るような年じゃ……ない、かぁ」
そうだ、人の心配してる場合じゃなかった。
まず、自分のことを考えなくちゃ。
◇◇◇◇
帰り支度を済ませ、エレベーターに乗りこんだわたしは、鏡張りになった壁面に映った全身をチェックする。
白のシフォンシャツに、ネイビーの膝丈スカート、ベージュのパンプス。
仕事中ヘアクリップでまとめていたセミロングの髪は、さっき下ろしてワックスで整えてきたばかり。
天然パーマって、ひと手間で簡単にゆるふわスタイルになってくれるから助かるのよね。梅雨時は爆発して最悪だけど。
今が10月でよかった。
派手過ぎず、カジュアル過ぎず。
うん、悪くないじゃない?
婚活イベントに参加するなんて、これが初めてで。
どんな格好で参加すればいいのか、全然わからないけど……
金曜日の夜だし、仕事帰りに参加する人がほとんどだろうから、そこまで着飾る必要はないよね?
納得させるように鏡の自分へ頷いて、グランドフロアのボタンを押した。
乗客一人きりの箱。
音もなく下降を始めたその中で、まさか自分が婚活イベントに参加することになるなんて、とわたしは苦笑交じりに独り言ちた――